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 タツオは静かな声でいった。 「覚悟しておいたほうがいい。今回はまだ敵は甘かった」  ジョージの目を見た。わかっているというふうにうなずきかけてくる。テルとクニにはタツオの意思は伝わっていないようだった。 「今回はまだ日乃元的な自軍の損失を最小限に抑える戦法をとってきた。だが、つぎからはきっと変わるだろう。氾帝国風のでたらめな消耗戦に引きこまれるはずだ。一人一殺どころか、十人一殺の勢いで攻めこんでくるはずだ」  それはきっと陰惨な戦闘訓練になるはずだ。実際の日乃元進駐軍ではなかなかとりにくい戦法である。だが今回の模擬訓練では高電圧の電撃を受けて失神するとしても、実際に兵は死なない。だからこそ氾流の人命飽和作戦も気兼ねなく実行することができる。この先戦いはさらに険しく、暗く、厳しいものになるはずだ。  そこで心を折らずに勝ち続け、最上位の成績を収めた者だけが「須佐乃男」に乗ることができるのだ。  クニがうつむいていった。 「なあ、みんな、おれたちは『須佐乃男』に乗れば、たとえ勝ったとしても、人生の何十年かを、青春を丸々失うんだろ」  誰も答える者はいなかった。ふたつのベッドと机が置かれた居室の空気が重く沈みこんでいく。吐くようにクニが笑った。 「その決戦兵器に乗るまで、おれたちは自分の国の友軍に何度も何度も殺されなきゃならないんだぞ。『須佐乃男』作戦にそんな価値があるのか」
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