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長谷川翔太は、トイレの個室のドアを閉めると、ホルスターの蓋を開け拳銃を取り出した。
シリンダーを開け、装填されている五発の弾のうち四発を抜いた。
シリンダーを戻し、回転させる。
翔太はこめかみに銃身を当て目を閉じた。
金属の冷たい感触が伝わってくる。
今日一日を思い返してみる。
人生において、今日という日は一日しかない。
充実した人生を送るためには今日を悔いなく生きることが大切である。
翔太は教師である両親からそのことを教えられて生きてきた。
警察官として自分は今日一日真摯に生きたか。
じっと考えてみる。
答えは、イエスだった。
だからこの引き金を引くことができる。
翔太はためらわずに指に力を加えた。
カチッと言う音が聞こえた。
弾は発射されなかった。
小さく息を吐く。
次の瞬間、翔太のなかに明日も自分は生きるのだという覚悟のような気持ちが湧きあがった。
新しい一日をむかえる高揚感が生まれた。
翔太はこの感覚が欲しくて毎日儀式を続けているのだった。
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