灰まみれ

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「自分の将来、ねえ」  実はその時まで考えたことがなかった。いや、孤児院にいた時は毎日考えていたけれど。ただノンドミアの家に来てからは、ない。  そうだな。美味しいものをたくさん食べていたい。恋愛とか結婚は想像がつかない。お母様みたいな立派な女の人には到底なることができなさそうだ。 「なんか、ずっと今のまま使用人をしていそう。成長なさすぎてつまらないかもですけど」 「そっかそっか」  エルシーお姉様は笑った。いつのまにかミーシャお姉様も近くにいて、笑っていた。    あの言葉をどちらのお姉様が言ったのか。それをなぜだか思い出せない。 「それは……実は一番幸せなことだったりするのよ」  思い出したいと思っている。その言葉は今となってはとても素晴らしい言葉だと思うから。  とはいえ、立派な二人の姉は、実のところどちらも同じことを思っているのだろう。  
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