灰まみれ

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 部屋の隅にドアがあったので、それを開けると長い廊下が続いていた。天井は高くアーチになっていて床には赤いじゅうたんが敷いてある。右側の壁は大きな窓になっていて、噴水がある庭園が見えた。  廊下には人がいないわけではなかった。ぽつ、ぽつとカップルがたたずんでいる。なんだか悪いところに来てしまった気がした。  窓に庭園と行き来できるドアを見つけたので迷わず外に出た。  いつも見ているノンドミアの家の庭よりずっと豪華で気おくれするが、人がいない、静かな場所に来て少しほっとした。日頃ノンドミア家以外の人と接しないのでわからなかったが私は案外、人見知りなのかもしれない。    庭園の奥へ進んでいくと、小さな柵があった。さらにその奥には花も池も噴水もない、大きく平らな草原のようなものが広がっている。  それが何なのか全く見当がつかなかったので、私は柵の奥に行くことを躊躇して、とりあえずそれを凝視していた。  ・・・埒があかない。とりあえずくぐってみようかな、でも誰かに注意されたらいやだな。  暖かい、人のにおいのする風が吹いた。  とくになんの考えもなく風の吹いてきた方向を見た。  そこで私はだれか男が立っていることに気付いた  
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