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私はぎょっとして飛び上がる。相手はそれに驚いたように後ずさった。
そこでようやく男の顔が見える。どことなく東洋系の顔立ちで私と同じかちょっと上の年齢だ。こちらを見て驚いた顔をしている。服装はTシャツとジーンズといういで立ちで舞踏会の客ではないみたいだった。
とりあえず怪しい人じゃないようだ。私はほっと息をつく。
男が口を開く。
「あのう、そこで何をなさっているのですか?」
注意というより、質問らしい。正直に答えてみようか。
「格差社会から逃げているんです。」
「・・・は?」
まずい、冗談が通じない感じの人だ。
恥ずかしくなってきた。
「えっと気にしないでいいですよ?」
「いや、事情が気になるんですけど。」
ああああああ。本当に冗談が通じない。
私の足が逃げろと言ってくる。
「すいません。失礼しましった。」
結果、私は逃げた。
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