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どうしよう。行き場がなくなっちゃった。
途方にくれながら、さっき通った廊下を戻っていく。しかたないからお姉さまと一緒にいて、おとなしくしていよう。
部屋に通じるドアを開けた瞬間、ちくちくした雰囲気が肌を刺した。なぜだかいやな予感がする。
舞踏会の客はみんな同じ方向を注視している。
その先にはいったい何があるのだろう。
見てはいけない、と脳が警報を鳴らした。
「ちょっと、いったいどういうことよ!」
ああ。エルシーお姉さまの声だ。もう逃げられなくなる。
「お前に関係ない。」
低い男の声が響く。
ミーシャお姉さまやお母様はいったい何をしているの。
「関係なくないわ。私たちのお母様なんです。」
普段は絶対に聞かないミーシャお姉さまの取り乱した声だ。お母様も巻き込まれている?
客の網をかき分け、やっと現場にたどり着く。
予想していたけど、いやな光景だった。
4人の屈強な男がお母様を囲んでいる。そのすぐ近くでお姉さまたちが涙目になっていた。
「じゃあ教えてやる。お前たちのお母様を俺たちは、反逆罪で逮捕する!お前らはおとなしく帰れ!」
ハンギャクザイ?えーと・・・なんでお母様が。
私よりも頭の回転が速いお姉さまたちが叫ぶ。
「なんでお母様がそんなことしなきゃいけないのよ!」
「帰れって、おとなしく帰るわけないでしょ!」
男も負けじと叫んだ。
「うるさい!てめーらも反逆罪で逮捕するぞ!」
あまりのことに、お姉さまたちと、たぶん私の表情も固まる。
「大丈夫だから。」
はっとした。それまで黙っていたお母様が口をひらいたのだ。
しっかりとした、やさしい声で。
「エルシー、ミーシャ、それからルピア。」
お姉さまたちと私の顔を順々に見る。
「私は大丈夫だから、家に帰りなさい。道中気を付けて。」
呆然としてお母様を見た。
男たちに黙って連れていかれる背中を、私は見送った。
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