灰まみれ

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ミーシャお姉さまがどすんと音を立ててソファーに腰を下ろす。怖い顔だった。私は部屋の隅でなるべく音を立てないようにして立ち尽くしていた。  家についてから誰も何も話そうとしない。  エルシーお姉さまは一番ショックを受けている様で、ソファーの上で音を立てずに泣いていた。  おかしい。おかしいおかしいおかしい。  数時間前に家を出たときはみんな笑っていたはずだった。みんないつものみんなだった。お母様もいた。  いや、おかしいのはお母様の反逆罪だ。まずお母様はあまり宮廷そのものとかかわってなかった。・・・私の知る限り。  お母様が反逆罪なんてくわだて るだろうか。違うとしか思えない。あの人は基本厳しいけど、公正で常識人で、根はとても優しい。家族がみんな笑っていればしあわせだというような人だ。  でも人の本質なんてわからない。私は今までの経験でわかってる。わかってる。でもどうしても腑に落ちない。  音が、しない。  7歳の時、私は孤児院にいた。物心ついた時にはそこにいたから、その環境を不思議とも何とも思わなかった。そこはみんなが怖い顔をしていた記憶がある。私もたぶん周りの人と同じ表情をしていた。  だけどその時もたった数時間で環境が変わった。ある日女の人が来た。その人は少し孤児院を見学した。なぜか私が呼び出された。紙に指でしるしを押した。それで私はこの家の使用人になった。女の人はお母様だったのだ。  私は、そのことを後悔していない。  お姉さまたちを見た。口がむずむずした。でも言いたいことが見つからない。  結局私はそこから逃げるように立ち去った。  お姉さまたちの微妙な視線を感じる。    このくそやろう。  自分の唇をかみちぎりたくなる。
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