序章 語り手

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 私は今ここに、『語り手』としています。  人生、いわば人の物語には、たくさんの『だれか』が存在するのです。  不思議なことに、『だれか』は変化します。  時や、場所や、接する人によって。  あなたも学生になったり、親になったり、スーパーのレジにいる人になったりするでしょう。  私だって、生まれてからずっと、語り手というわけではないのですから。  そして、私が大事だと思うのは、自分の物語に、どんな『だれか』が登場するかです。  どんな『だれか』と出会うかは、人生に大きく左右することなのです。 この物語は新暦二百十七年のサルリベルノ王国から始まります。 独裁国家から革命で独裁王国に変わって二百十七年の月日がたったその国は、科学と文明による当たり前な自由と、当たり前と錯覚させられた身分制度と戦争と、貧乏という当たり前と認めて貰えない当たり前が混在していました。 『語り手』は、そこに違和感を感じた人間でした。
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