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「・・・アリュスムーニの漆器を売ろう。それで何とかならないか?」
「いくらかましにはなるでしょうけど、借金を返済するまでにはなりません」
借金?このホテルが?]
「やはり経営規模を縮小するしかありませんね。リストラも考えなければ」
リストラ。誰かをクビにするのか。顔がひきつるのを感じた。クビになるとすれば、1番新参者の私だ。そうなったら・・・。
待て私。もしかしたらぼろアパートに住むほかの人もそうなるかも。例えば、アリアとかサヤン。
体の線が震えた。皆生きることにも精一杯なのに。
生きることにも・・・。
アルソンさんが息をつくように言った。
「やはり戦争の影響は免れなかったか」
戦争。また戦争か。なんだ戦争って。
舞踏会の時の二ウワ城を思い出す。あのわけのわからない、ばかでかい、格差社会の城を持つ国が戦争をしているのだ。
私は、反国主義になってしまいそうだ。
「仕方がないでしょうね」
そういって2人は廊下の奥へと歩いて行った。
・・・私も仕事に戻らなければ。
足を踏み出すと何か違和感を感じた。
・・・?
ごっぎーん。
ものすごいへんな音。どっどっどっとアルソンさんたちが戻ってきた。
その視線の先には、足の力が抜けて、すってんころりんしてしまった私がいる。
「・・・ルピア君?」
アルソンさんは唖然とした声を上げる。
やばい。聞いてたのがばれるかも。
ブッセルさんをちらりと見上げると、なぜか私の足のほうに視線が注がれていた。自分の足を見ると、スカートがめくれて、いつもより足が見えている。最低だ、この人。私は急いで立ち上がった。
「すいません。大丈夫です」
「それはよかった。ところでこんなところで何をしているのかい?」
「え」
知らないふりをしてもよかったのになぜか私はあわてた。口がパクパクして、挙動不審になる。
「さっきの話を聞いてたんだね?」
「・・・はい」
ブッセルさんは少し怒ったような顔をしたが、アルソンさんはさすがで、ほとんど表情を変えずに話を続けた。
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