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「そうか。それは仕方がない。だけど安心しなさい。君はツェザさんのところのお願いで来たんだ。そんな子をクビにしたりはしないよ」
「え?」
アルソンさんは優し気な笑みを浮かべた。どうやら本気のようだ。
「ありがとうございます」
私はお礼を言った。
アルソンさんたちが行ってしまってすぐに激しく後悔した。
あんなふうに、クビにしないといわれても、ちっともうれしくない。私は、私はしょせんコネで食べていく、世間様に申し訳ない子なのだ。コネで就職し、コネでクビを免れる。それは確かに犯罪ではないかもしれないけど、私の周りにいる、お母様や、エルシーお姉さまやミーシャお姉さまや、アリアやサヤンに申し訳が立たないことだと思う。いや、コネを使ったのは、ノンドミア家の人たちだから違うだろうか。ううん。違くない。
これは私の、プライドの問題だ。今までそんなプライドなかったけど、今芽生えた。
でも、なぜか私はアルソンさんに、ありがとうございますといった。特に意識したわけじゃなく、気づいたら言っていた。つまり、私の中には、アルソンさんの言葉を気に入ってしまったという、黒くて、ひどい部分があったのだ。
これからどうしよう。
もし・・アリアやサヤンがクビになってしまったら顔もあわせられない。
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