灰まみれ

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麗らかな春の終わりの朝六時。場所はサルリベルノ王国ウリンガル地方のノンドミア邸。ちなみにノンドミア家は七代にわたってウリンガル地方の地主を務めている。  とても真面目で優しい十五歳の私、ルピアはこの家の使用人であり、またミーシャお姉様はとっても怖いノンドミア毛の長女で二十二歳である。  今日もミーシャお姉様は私の元へやってきた。 「起きなさってお寝坊さん。今のあなたに人権は皆無よ。身を小麦粉より細かく砕いて働きなさい」 「ミーシャお姉様。私は社畜じゃないの。小麦粉でもないの。ただ眠いだけの使用人です寝かせろ」 「ちょっと! いったいいつの間に社畜なんて言葉を覚えたの! さっさと記憶から消去しなさい!」  蛇のように静かなミーシャ お姉様とは対照的に、エルシーお姉様は獅子のような勢いで飛び込んできた。エルシーお姉様はノンドミア家の次女で、とってもうるさい二十歳だ。彼女は軽やかに私の上で飛び跳ねる。私はぼんやりと、ああこれ背骨折れたかなと考えた。  これ以上寝ると殺されるかなと思い、私はベットから体を起こす。お姉様達は満足そうにうなづき、私の部屋から出て行った。  私は、Tシャツと短パンに着替え、その上に亀のマークが刺繍されたエプロンを着けた。それから鏡の前に立って、長い茶髪を二つに結った。これで準備は完璧だ。ただこのまま下に降りていくのはなんか嫌なので、インターネットに不満をぶちまけることにした。充電しておいたスマートフォンを手に取り、起動させる。 ルピア@rupi-a 聞いて聞いつて。私のやといぬしがめちゃくちゃうさいの!なぜか自分のことおねえさまとかおかあさまってよばせるし、きゅうりょう超やすいし。ほんとむかつく。どっかいけ~。  誤字は修正の仕方がよくわからないので放っておくことにする。スマートフォンは面白いが、言うことを聞いてくれないので面倒臭い。もっと便利にはならないの。  一応補足しておく。十五歳の私ルピアは、とんでもない世間知らずだった。  お腹が空いていたが、朝食の前にやらなくてはいけないことがまだまだある。だだっ広い庭に出ていくと、みんなもう揃っていた。
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