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「うへえ。やだよ。私が真剣、エルシーお姉様が木刀ならいいけど」
「なんだその理不尽。だめよ、私は本気なの」
「仕方ないですね。このルピアさまと名刀とん介のボキャブラリぃに敗北という文字はありませんよー」
エルシーお姉様は強い。剣術だけなら私は負けないけれど、心の強さとか、そういうものではかなわないと思う。
剣を交える。自分より頭一個分ほど高い位置にあるエルシーお姉様の顔を見る。瞳をギラギラと輝かせていた。この人はすごい。剣を二人で振り回している時にはいつも実感する。なんというか、眩しい。
このエルシーお姉様の夢は国の軍隊に入り、戦争で前線に立つことだという。お父様の背中を追いかけたいのだそうだ。私には戦争に行きたいなどという大変そうな夢は全く理解できないけど。
私は素早く剣を動かした。エルシーお姉様は強いけれど遅すぎる。しばらく剣を打ち合っていると、必ずどこかに隙が出てくるから、私はいつもそこを狙っていた。今回も私がエルシーお姉様の右の肩に剣を当てて終わった。
「そら見ろー。私の勝ちです!」
エルシーお姉様は悔しそうに足をバタつかせた。
「いやあああ。あんたが素早過ぎなのよ! あーもう今日は勝てると思ったのにいい」
「甘いよお姉様。私に負けているようでは軍隊にはまだまだだね。はっはー」
目上の人を悔しがらせるのは愉快だ。剣術は私の唯一の得意分野だ。
いつも通りの日だったその日。エルシーお姉様はふと、私にこんな質問をした。
「ねえルピア。あんたの将来の夢、みたいなものって何?」
「ええー? 将来の夢? ……ないかなあ」
「ないのかあ。じゃあ質問を変えるわね。自分の将来を想像したとして、その自分は何をしているの?」
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