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ダンディーなどという言葉だけでは片付けられないだろう。
見てくれだけじゃないという事は、彼と同じ場所で働いた者なら皆知っている。
その圧倒的な存在感に誰もが魅了された。
『良くも悪くも』
という言葉を付けなければいけない事だけが、残念でならないが――
「できるだけ安く良い物を希望されている様です」
「だろうな。更に値切ってくるだろうなー、あの先生」
「そう思います」
「ほとんど全部だろ?」
「はい」
「まったく。いい客回してくれたよなぁ、乾」
「恐縮です」
書類に落としていた視線を俺に向け、ニヤリと口元だけで笑う彼は、口で言う程困っている様には見えない。
サチと熊野先生相手にどう交渉していくか、この人の頭の中では既にシミュレーションされているんだろう。
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