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「あはは。そうですねぇ」なんて黒縁眼鏡を上げて笑って誤魔化してはみたものの、あながち外れていないから困る。
佐藤に取られる筈はないが、もし他の誰かに取られたら『惜しむ』だろうと思う。
「手当り次第手をつけろ。とは言わないが、大事なものはひとつくらい手元に残しておけよ」
そう言うと、ふと俺から視線を外し「ただ」と続ける彼を見た。
「やり方は間違えるな」
少しだけ低くなった声。
本当はまだ後悔してるんじゃないかと思った。
「……そうですね」
だからこそ、彼の言葉が深く、重く、俺の胸に突き刺さる。
「いい恋しろよ」
「善処します」
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