きくお

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きくおはそうやって生まれた。 夫婦は犬のように言うことを聞く、子供を望んだ。 一度叱れば理解する。 小さい時、言葉は分からなかったが、親の感情は分かった。 褒めているのか、喜んでいるのか、叱っているのか、怒っているのか。 親の感情によって従順に行動するよう、きくおは定義されていた。 父親と二人で商店街を歩いていた時、きくおはおもちゃ屋の前で止まり、テレビで見たことのあるアニメのキャラクターグッズを手に取った。 「これ欲しい」 きくおは父親に向かってそのおもちゃを見せた。 「きくお、今日は買わないよ」 父親は首を振った。 一度言えば分かるだろうというふうに。 「うん」
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