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きくおは父親の顔を見た瞬間、持っていたおもちゃを置いた。
本当はとてもとても欲しかったはずだが。
「ママ、ブランコしよう」
公園の砂場で遊んでいたきくおは笑顔でベンチに腰掛けている母親を呼んだ。
母親は時計を見て、
「もう夕方よ」
素っ気なく返事をした母親は立ち上がった。
「分かった」
ブランコを片手に持っていたきくおは先ほどの表情が消え、すぐに母親のもとに駆け寄った。
「あなたがまたお金、使い込んだのね」
「しょうがないじゃないか。俺には付き合いがあるんだから」
「だからって毎月毎月赤字じゃ、生活もやっていけないわ」
「金なら貯金を切り崩せばいいだろう」
「そんなことしてたらすぐに底をついてしまうわ」
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