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適当に観るものを探すうちに、おれは「あっ」と声を上げた。
(あのお姉さんだ!)
藤本先生のせいでダダ下がりのおれのテンションが、一気に上がる。
あのお姉さんとは、いつも登校中にすれ違うお姉さんのことだ。
サラサラの長い髪で、ヒールの高い靴を履いて、真っ赤な口唇で、学校前のバス停でバスを待っているのを毎朝見かける。
うわーキレイな人だなぁっていつも思ってた。
クラスのガキっぽい女子とは大違いの、大人のお姉さん。
そのお姉さんを観れるなんて、今日はすごくツイてる!
わくわくとレンズを覗き込む。
(もーちょっと大きくならないかなぁ)
お姉さんも帰ってきたばっかりみたいだ。上着を脱いで、ハンガーにかける。
そして、
「え、ウソ、まじ、えぇ~~?」
おれはぶわわっと耳まで真っ赤になった。
お姉さんがブラウスのボタンに手をかけ始めたのだ。お姉さん、カーテン! カーテン閉め忘れてるよ! マンションの五階でも安心できないんだよ!
覗いているおれが言うのもおかしいけど、とにかく慌てふためいて無意味にじたばたしてしまった。
お姉さんのボタンが外れる。一個め、二個め、三個……
あっだめだっ、観ちゃいけない!!
バッとおれは両手で顔を覆い、目をつむった。
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