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……。
ちょっとだけ時間が経つ。壁の時計がチクタクうるさい。
目を開けて、そーっと手を広げて、そーっと望遠鏡に触って、
(……ちょっとだけなら)
やっぱり、そーっとレンズを覗く。
ドキドキしながら薄目を開けると、ーーあれ?
お姉さんの姿は無かった。
その代わりに、見知らぬおじいさんが見えた。
(あー……)
じたばたしているうちに、向きが微妙にズレちゃったのか。
ガックリしそうになったけど、落ち込んでいる暇はない。すぐに戻さなきゃ!
そう目玉をかっ開いたときだった。
レンズの向こう、マンションのガラスの向こうで、名前も知らないおじいさんが胸を抑えて倒れた。
「へっ!?」
びっくりしたおれは、前のめりになって覗き込む。
おじいさんが床に倒れている。表情はよく見えないけど苦しげだ。手を掲げて、必死に助けを求めている。
これ、もしかして、もしかしなくても……
「ヤバい!!」
そう言うが早いか、おれは机の上のケータイをつかんだ。救急車の番号を死ぬ気で思い出しながら。
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