図らずも秤にかける羽目になった浜野蓮輝の恥ずべきシュミ

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 数日後。  朝ごはんのメロンパンを食べているおれの横で、パパが新聞を読み上げた。 「へぇ、『資産家、恩人を探す』だってさ」 「何それ?」  冷蔵庫からパックのオレンジジュースを取り出し、コップふたつと一緒にテーブルに置いたママが聞き返す。  おれは手を伸ばして、まだ寝てる兄ちゃんより先にジュースを自分のコップに注いだ。もちろん多めに。 「ほら、こないだ近くのマンションで、資産家のじいさんが救急車で運ばれる事件あっただろ」 「ああ、別宅にしているマンションで一人のときに、心筋梗塞になったっていう」 「そう。そのじいさん、自力で救急車を呼んだんじゃないんだと。どうやら誰かが通報してくれて、ギリギリで一命を取り留めたらしい」 「誰かって誰が?」 (おれです)  ふたつめのメロンパンに手を伸ばしながら、心の中で挙手起立。  あの後、おれは110番をした。学校で通報の仕方は習っていたから。  問題は住所だけど、それもすぐに分かった。  ちょちょいっと望遠鏡の向きを変えて、マンションの入り口の前にある自販機に貼ってある、『住所表示ステッカー』を見たのだ。ふふん、これくらいの操作はお手のものさ。 (にしても、学校の授業なんて何の役に立つんだって思ってたけど)  案外役に立つじゃん。ちょっと見直した。 「通報は匿名だったらしい。それで、意識を取り戻したじいさんが、是非命の恩人にお礼をしたいと言い出して。名乗り出てくれれば、相応の謝礼を払うって」 「あらまあ!」  ママは驚いたけどおれの方が驚いてる。  シャレイってお礼のことだよね?  ってことは、お金がもらえる?  ひとつ八十円のメロンパンの袋を破く手が止まる。  おれは想像した。  『ぼくがおじいさんを助けました!』と名乗り上げて、ヒーローになって、新聞にだって載って、テレビにだって出て、おじいさんからお金をもらう自分を。  にへっとつい笑いそうになったけど、同時にハッと気がついた。
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