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ーー翼裟くんは不思議な人だった。
『だけど、今はそんなこと思ってない。好きな時に言うのがいい』
満面な笑みに心臓がドキッとさせてしまう。
これが本当の笑顔だと思うとなんだか納得する。何も言えなかった。
〝楽しい〟と心から自然に出てきたと思うと、とても笑え難かった。自慢したいくらいとでも言うくらいだ。
そんな翼裟くんはじっとみつめながら沈黙を破るやいなや眼鏡をカチャッと上にあげて本を鞄にしまいこんだ。
「そんな俺だったら、いつでも求めろよ。俺が助ける、捨て鉢を」
まるで、ズルするかのように仕掛けでも掛けているのかすこし真面目な顔をした翼裟くん。
―――やっぱり彼は優しい
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