心のふるさと

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それでも穏やかな時が流れて行き、娘達がやがて年頃を迎えて、一生を添い遂げようと思えるような良き伴侶を2人とも見つけて。私達夫婦は、娘達の晴れ姿を見る事が出来た。 その時、私の脳裏には、それぞれの娘達が産まれた時の感動や、話し出した時やら歩き始めた時やら、小学校に通う年齢になった時のこと。初めて親元を離れて、集団とはいえ、泊りがけの旅行へと旅立つ朝のこと。熱を出したり、転んで怪我をした時のこと。中学校に通う年齢になった頃には、父親である私と距離が出来た事。高校までそういう部分が有った時の寂しさ。 そんな様々な出来事が過っていた。 娘というのは、思春期を迎えると、父親と距離を置くものだ。と聞いてはいたが、実際に経験すると、なんと寂しいものか。 ところが、私はまだ家族で食事が出来ただけマシだと周りは言っていた。 作家という職業柄、流行に気を配るようにしていて、新聞もテレビのニュースもなるべく欠かさないようにしていた。作家同士の交流も編集者との交流もある程度は保っていたおかげか、その時その時の流行やニュースを早いうちから耳にしていたのだが。 どうやら、時の流れとやらは、父親の威厳というものさえ、失わせるものだったらしい。
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