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その時には、かなりの高熱で体力も奪われていて、数日中が山だ、と言われていた。
あまりの事に咄嗟に声も出なかった。
結婚した時に、私は丈夫です。と言った妻。その言葉通りに、大病もせず、いつもにこにこと笑っていてくれたのに。咳を、熱を隠していただけで、拗らせて肺炎にかかって。
そして、呆気なく生死の境に立っている。
と告げられて、誰が信用すると言うのか。しかし、医師はこの時の私にとって残酷で。覚悟をしておいて下さい、と。一体、何の覚悟だと言うのだ。
治りますよね?
そう確認する自分の声が、何処か遠くから聞こえる気がした。解らない。と医師が首を振り、お子さんがいらっしゃるなら、ご連絡しておいた方が良いでしょう。と言われ。
なんだか夢現のような気持ちで、病院の公衆電話から娘達に連絡したのを覚えている。すぐさま駆けつけた娘達は、それぞれの夫と子ども達を連れて来て、私の側に居てくれた。
こう言ってはなんだが。娘達が大人になった、とその成長を感じたのもこの時だった。それまでは、やはり何処か、娘達は子どもだったのだ。
結局、妻は、持ち直す事なく、私を置いて逝ってしまった。嘘のようだった。
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