第16章 振り切る

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わたしは身体を震わせた。いったばっかりで、すごい敏感になってるから、もう…。 そんな風にして修介もこの状況を了承した。男二人がどういうわけか激しい嫉妬や抵抗も見せることなく意外にあっさりこれを受け容れたことに拍子抜けすると共に、こんなこといいのかな、との疑念が拭えない。 本当にまともなこととは思われない。わたしの感覚が変なのかな。 …まぁでも、拝島くんの動機はわかる。わたしが修介と今別れる、って選択肢がない以上、彼は同時進行を認めるしかない。それ以外にわたしとの関係を続ける方法がないから。でも。 修介の場合、もしかして。…若干この状況に興奮してないか? うっとりとわたしを抱く彼の腕のなかで思わずため息をつく。予想外だったが、どうやら『他の男に抱かれているわたし』に欲情するという性癖もあるらしい。さすが、変態。間口広いなぁ…。 まぁ、嫉妬の炎を燃やされるよりはいいのだが。 「…一度その人に会いに行く必要があるんだよね?」 わたしの髪を撫でながら真面目な声で問いかける。わたしは頷いた。 「週末でいいと思う。彼は仕事夕方からだから、昼間は時間あるし。…わたしが書店の方、休める日があったら。…わたしもその場にいないと駄目だって言うし」 修介は苦笑い気味に言った。 「そりゃ俺だって。…君がいなくてその人と二人きりなんて。正直怖いよ」 「うーん…。それほど怖いような人じゃ」 ない、のかな。わたしは言葉を止めた。よくわからない。愛想はないし、ぶっきらぼうだから、怖く見えるかも。でも。 一体三人で何話そうっていうんだろう?この状況はとりあえず三人とも納得したわけだし。細かいルールを決める? それとも彼の人物を見極めたいってことなのかな。わたしを預けるわけだし。…うん、それが一番あり得る。多分そういうことなんだろう。 …そしてわたしたちはしばらく後に、その当日を迎えることとなる。 「ああ、どうぞ。…上がって」 ドアを開けた拝島くんに促されて恐るおそる頭を下げ、中に入る修介。わたしも軽く頭を下げてそのあとに続いた。とは言ってもわたしにとっては勝手知ったる他人の家だ。それよりも、ドアを開けてくれた彼を見たとき、結構いい男だなぁとか阿呆なことを考えてしまった。無意識に他人の目のフィルターを通したからかもしれない。 腕のいいバーテンダーだし、女性が苦手じゃなかったら相当もてたに違いない。
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