第15章 引き続き、拝島くんとわたし

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じゃあ話は早い。俺はもう覚悟を決めた。 彼女が俺のことを嫌いって理由以外では、俺は絶対、別れない。 その旨を伝えると彼女は絶句した。そんな反応が返ってくるとは思ってなかったようだ。好きだ、とはっきり口にしたら自分の腕の中に顔を埋めた。耳が真っ赤だ。 俺の気持ちを彼女が知らなかったことに愕然としたが。大の四十男がこんなにおたおた、どぎまぎしていたんだから、もう全く見え見えだとばっかり思っていた。 …まぁ、気持ちがちゃんと伝わってなかった原因は結果自分にあったのだが。そこの行き違いのやり取りがあったのち、桐子が俺とのつき合いを続けられない理由を訥々と話し始めた。 俺は内心ため息をついた。…やっぱり。あいつか。 彼女があの店で会った、消えた謎の男。ここまで漕ぎ着けてから今更現れるとは。 その瞬間、それまで完全に忘れていた保彦の声が耳にリアルに蘇ってきた。 …彼女は止めた方がいいぞ。あの男にもし何かの拍子に再会したら、間違いなくそっちへ行くぞ。何年何十年かけて関係積み上げてもそんなことお構いなし、一瞬で全部チャラだ…。 『呪い』、という言葉が頭を過る。保彦の放った言霊が今、現実となって還ってきた。 あいつは本当にこうなることがわかっていたんだろうか。 桐子がつらそうに、重い表情で説明を始める。俺が嫌いなわけじゃないのに、何故こっちじゃなくて向こうを選ぶ必要があるのか、言葉を選びながら思いあぐねるように一生懸命伝えようとしている。その理由は説得力があり、理解できる気がした。 理屈じゃなく本能で、抑えられずそいつに惹きつけられてしまう。ここで無理に別れてもいつか再会して同じことになるのが怖い。それくらいなら今、行き着くところまで行ってしまってこの関係の底を見て、全部終わらせてしまいたい。 筋が通っている。でも。 それが俺と別れる理由にはならない。 そう告げると彼女はぽかんとした。俺の言ってることがどうしても上手く飲み込めないようだ。しばらく押し問答ののちに、彼女はやっと俺の言い分を理解した。 「……同時進行?」 そう、そういうことだよ、桐子。 お前はこれから二人と並行して付き合っていくことになるんだ。 呆然としている彼女に噛んで含めるように、俺は絶対彼女と別れる気はないということ、その男がどうしても彼女と付き合いたいならこの条件を受け入れるしかないことをはっきり伝える。
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