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女の子に不自由ない人生だってあり得ただろうに、それがまさかこんな羽目になるとは…。
ちなみに、外見だけで言うと修介の方が普通の男の子感が強い。その辺の元気な小学生の男の子がそのまま大人になってスーツ着て仕事してる感じだ。まあ中身は結構な変態だけど。
部屋に通されて椅子を勧められ、修介が腰掛ける。わたしはキッチンに行ってコーヒーでも淹れようとして拝島くんに制された。
「いいって、お前は座ってろ。今日は客だろ」
昨夜の土曜日、わたしは修介の部屋に泊まってそのまま二人でここへやってきた。だから外から来たって言えばそうなんだけど。でも普段は半分ここに住んでるんだし。客とは言い難い。
「そんなことないですよ」
そばに寄ってきた彼を見上げて言うと、首を横に振ってきっぱり断言する。
「いや、座ってろって。コーヒーくらい俺が淹れる」
それからふと目が優しくなり、背中にそっと手を添えて席に戻るよう促された。
「…本当にお前はそういうとこ。…気遣い性だなぁ」
背中に添えられた手が柔らかくて優しい。ちょっとどきんとする。この人、人前でこんな風に優しくしてくれる人だっけ?
何だろう、どこかいつもと様子が違うような気がする。他人がこの場にいるからなのかな。それで雰囲気が違って感じるのかも…。
コーヒーを持った拝島くんがソファの長椅子側に一人で座ってわたしと修介にカップを手渡した。わたしたちは向かい合わせに置かれた一人がけのソファに各々かける。普段こっちに座ったことがないのでやや落ち着かないが。話の方向上、わたしプラス修介対拝島くんの配置になるのが適当な気がするし、そうすると何となく拝島くんの前で二人で長椅子に並んで座るのも気が引ける、気がする。
「…修介くんは幾つなの?」
「あ、二十五です」
さすがにちょっと硬くなった修介が畏まって答える。…ふぅん、やっぱりね。二十代半ばだと思った。って、結局今初めて彼の年齢を知ったことに気がつく。いろいろ忙しくて、そういう話をする場がなかった。いろいろって、まあ主にあれだけど。
桐子よりだいぶ歳下だな、とか言われるかと思ったが。今日はそういうのもなしらしい。てきぱきと大人の口調でフルネーム、何処に住んでいるか、仕事は何かなど質問は続く。まるっきり面接だ。
もしかしてこれで採用か非採用か決まるのかな。非採用になったらどうなるんだろう。ここから叩き出される?
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