第16章 振り切る

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そもそもどういう基準で採用が決まるんだろ。そこからしてよくわからない。意欲とか訊かれるのかな? 内心で半分冗談交じりにそんなことを思ってたら、現実に話の方向はそっち側を示し始めた。 「君は桐子のことが好きなんだよね。一応訊くけど。…俺は絶対にこいつとは別れない。こいつが俺のことを嫌いになるか憎むかしない限り。だから、君は桐子とつきあいたければ俺とこの子を共有するしかないよ。それは承知してるの」 あまりにもはっきりと目の前で言われた内容に、赤くなるような蒼ざめるような混乱した気持ちになる。どんな顔をしてここに座ってたらいいのかもわからないし。一方修介の方は予めわかっていた話なので落ち着いて答えている。 「はい、承知してます」 「どうして承知したの?非常識な話でしょ。まぁ普通じゃあり得ないよね。受け容れようと思った理由は何?何が何でも桐子とつきあいたいからどんな条件でも飲む?それとも、この子とやれさえすればいいの?身体が目当てだから、それ以外はあまり気にしない?」 …結構なこと言うなぁ。なんか、圧迫面接みたいだ。それまで穏やかな表情だった修介の顔もさすがに強張った。 「そんなんじゃないです。…身体だけなんて、そんなこと絶対」 真剣な目ではっきりと断言してくれる。そう言ってくれるとは思ってはいたけど。…わたしと彼がろくに話もせずに夢中でセックスばっかりしてるのもまた事実ではある。 今は再会したばかりでお互いそこまで気が回らない、という段階だからだとは思うが。 「…俺がこの話を受けようと思ったのは、桐子さんが自分でこの話を持ってきたからです」 考え考え、言葉を選ぶように話す修介の様子にわたしは思わずそっちを見やる。…どういうこと? 「最初、再会した日に、彼女はつきあってる人がいるけどその人と別れてくる、そうするより他ないから、って言いました。でも、その後その相手の人に言われたことをそのままこっちに持ってきたってことは、桐子さんはそうしたいんだって思ったから…、本当はその人と別れたくないんだってわかったんです。ちょうどいい機会だからきっぱり別れるとかいうつもりなら、そういう話を持ち出されたとしても、俺にどうするか訊く前に握りつぶしてると思うから」 …わたしは内心で呻いた。それはそうだ…。 全部見透かされている。
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