第15章 引き続き、拝島くんとわたし

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歳が離れてるから惹かれない、なんて、そう割り切れれば苦労なんかない。思えば真砂の時だって十八離れていたって全然そんなことは抑止にならなかった。ただ、真砂の奴に関して言うと、正直あまり年齢のことなんか考えなかったのは確かだ。そういうことより本人の奇天烈さの方が余程インパクトがあった。珍獣に惚れるようなもんだ。珍獣との歳の差なんて誰が気になる? それに較べると桐子の時は、若くて溌剌とした綺麗な女の子に身の程知らずにどぎまぎするおっさんな自分って現実がダイレクトに突きつけられ、全くもって凹んだ。そしてそんな自分を悟られないよう、更にますます無表情になっていった。 だが、俺にはまだひとつ有利なことがあった。真砂のおかげでダメージを受けた性欲がまだ復活していなかったのだ。 精神的には桐子に惹かれて内心おたおたしていたが、その身体によからぬことをしたいという気はもう少し後まで起こらなかった。思えば彼女が受けた被害を知っていたことも関係していただろう。あんなことをされた子に変な気を起こすなんて、痛々しくてとてもできないと思ってた。 後になると勿論、そんなことも言ってられなくなってくるのだが…。 店の休みと彼女が部屋に来る日がたまたま重なった時、思い立ってちょっとしたディナーを作ってみた。彼女は例によって恐縮したが、喜んでももらえたようだったので、俺は気をよくして以後も休みの日は夕食を作るのが習慣になった。 それまで話をするといったら朝の短い時間に限られていたので、あまり込み入った話題には触れたことがなかった。増して緊張のあまりついワインが進んでしまい、お互いやや踏み込んだ領域に話が集中したようだ。 そこで俺は痛恨のミスをした、らしい。 何故か話題は真砂と俺のことになり、口の軽くなった俺は性欲減退のきっかけになった出来事まで披露した。それ以来真砂は勿論、他の女の人にも触れたいと思わない、と半分は桐子を安心させるために付け足すと、彼女は思いの外深刻な表情をしてみせた。挙句にお医者さんに診せた方が…、とか親身に心配されて、どうやら俺のプライドが少し傷ついたようなのだ。 俺は、普段自分で処理してるから機能は問題ない、と言い張り(とのちに桐子から聞いた。これだけでも相当恥ずかしい)、その上、真砂は無理だけどお前とならできる、とセクハラ言動をかましたらしいのだ。
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