第15章 引き続き、拝島くんとわたし

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多分、男性機能を疑われて傷ついたプライドの回復のために自分を誇示しようとしたのと、深層心理の助平心がだだ漏れになったんだろう。更にどういう思考回路のなせる技か、お前がそのうち男性が大丈夫になったら相手してくれ、と軽く言われたとずいぶん後に涙目で桐子に教えられた時はマジで気絶しそうだった。消えてなくなりたい。 自分がそんな最低な男だったとは…。 その後俺たちは後述するように少しずつ距離を縮め、実際に身体を重ねるようになるのだが、俺の方は彼女の恋人になれたつもりで有頂天だった一方で、桐子はどことなく俺に距離を置いているというか、何処か気を許せない様子でいるのは気づいていた。例の男のことが忘れられないでいるせいかと考えていたのだが、結局は酔っ払った自分のカスみたいな発言のせい、自業自得だったわけだ。 ずっと自分は身体だけ、俺の性的リハビリに付き合っているだけだと思ってたと物憂げに告白された時には己の馬鹿さ加減に泣きたくなったものだ。 こんなに桐子のことが好きで彼女に夢中だったのに、全く自分の気持ちが伝わってなかったとは思ってもみなかった…。 そう、俺は彼女に夢中になった。程なく自分でもその事実を認めざるを得なくなった。 彼女が泊まる日は胸が躍り、こっそり寝顔を見た。朝は頑張って起きて朝食を一緒に摂り、送り出すとベッドに倒れこんで泥のように眠った。起きられなかった日は痛恨の気分だった。 保彦の野郎が未練がましくも桐子の職場に顔を出した日、それ自体には目の前が真っ赤になる程腹が立ったが、同時にパニックを起こしながら俺に電話をかけてくれたことに感動してしまった。俺のことを思い出して、俺を頼りにしてくれたんだ。 佐山に声をかけたのは、櫻木がもう二度と桐子の前に顔を見せないよう圧力をかける時に応援が欲しかったせいもあるが、一人で迎えに行ったら絶対に理性が飛んで力一杯抱きしめてしまうのは目に見えていたからでもあった。 そんな抑制もしばらくすると無意味になってしまったが…。 程なく年が明けて寒さのピークの時季に我慢できなくてベッドに潜り込んだ時には、正直彼女の隣で眠りたいという密かな気持ちもなくはなかった。が、まだ有難いことに性欲は復活していなかったので、そういう意味で彼女を危険な目に遭わせることはないだろうという自信があった。 だが、そんな余裕も最初のうちだけだった。
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