第15章 引き続き、拝島くんとわたし

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思えば彼女とひとつのベッドで眠り、彼女の体温や匂いを感じ、その感触を味わうことが結果として俺の性欲のリハビリになったんだろう。つまり日が経つにつれ、俺は少しずつ男の意識になり、彼女に変な気を起こし始めた、ということだ。 睡眠中に何度か無意識に抑制が取れたらしく(断じて意識してではない)、朝気がつくと彼女を腕の中に抱いていることがあった。その度に桐子がやっぱりベッドから出て行ってくれとか、いやそれより自分がソファで寝るとか、更にはもうここには来ないとか言い出さないかとひやりとしたが、意外にも彼女は何も言わなかった。同じベッドで寝てるんだからこういうこともある、というくらいの認識らしい。 それどころか、寒さがおさまって気候が暖かくなり、冬から春と言っていい季節になっても彼女は特に俺を追い出そうとはせず俺たちはベッドで一緒に眠り続けた。 俺は勿論だが、桐子も俺の体温から何がしかの慰めを得ていたのかもしれない。それ自体は予想外の嬉しいことだったが、そういう日々が続くにつれ、俺の理性も本格的に試練に晒されることになった。 次第に彼女の温かく柔らかい身体の感触に、堪え難いほど激しい甘い疼きを感じるようになってきた。そのことを悟られたら桐子は逃げ出してしまうだろう。彼女の身体の安全のためにはその方がいいに決まっているのだが、俺自身はどうしても彼女のそばで寝たい。『森のくまさん』の気分だった。お嬢さんお逃げなさい、と言いつつとことこ追っかけていく、お前はどっちがしたいんだよ!ってヤツである。 ある晩、ついに俺の理性は振り切れた。 俺がベッドにそっと入っていくと、うぅん、とか、うん、というような可愛い声を曖昧に出したので、そっと顔を覗き込むと殆ど寝ている。じゃあ今の声は何だ?と思いつい 「…起きてる?」 と声をかけてみた。呼びかけに反応して何とか目を開け、半睡の状態で 「うん…」 と答えてくれたが、どうしても起きていられない、という様子でとろとろしているのがたまらなく可愛い。思わず半身を起こしてずっと見つめていると、やっと少し意識がはっきりしたみたいで何とかこっちを向いて、 「…どしたの?大丈夫?」 と心配げに尋ねてくれた。その表情が。 …もう。 俺は思い切って彼女に顔を寄せた。もうこんなの無理、絶対。こんな近くにいるのに、我慢なんか出来ない。
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