第15章 引き続き、拝島くんとわたし

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唇を寄せつつ、嫌なら拒んでくれと心の中で懇願していた。でも口には出せない。 だって、本当は拒まれたくないんだ。どうしても。 驚きで目を見開いた彼女の唇に自分の唇を強く押しつけた。唇を閉じたままに抑えておくのに殆どのエネルギーを費やした。 初めて桐子にキスした。心臓が喉から飛び出しそうだ。 それ以上彼女の反応を見ていられなくて、おやすみ、と声をかけて背を向ける。いろんなことにエネルギーを使いすぎて一気に消耗した。もう保たない。 俺は殆ど気絶するように眠りに就いた。…らしい。もうそのあとの記憶はない。 その後は何もかもがなし崩しだった。 最初のキスの後は彼女がどう感じたかが気になって、しばらく様子を伺っていたけれどあまり変化は見られなかった。どうやらあれは俺のちょっとした気まぐれ、気の迷いとして処理されたらしい。俺はがっくりして、二度目までに相当の時間と勇気を必要とした。 尤も勇気を要したのはそこまでで、以後は自分を抑える方が余程大変だった。触れるだけのキスを達成すると、次は唇を開いて欲しくなる。それが受け入れられたら今度は舌を…、という調子で、気がつけば結果相当の激しいキスを求めることになった。そしてどういうわけか彼女は拒まず受けてくれた。 彼女を抱きしめて、喘ぐようなキスを交わしながら、いつしか自分の性欲が有り余るほど復活しているのに気づく。むしろもう抑制するのがつらかった。結局俺はそのまま押すことにした。キスだってここまで深く受けてくれる。嫌ならもう少し早くに嫌って言ってくれるはずだ。多分。 さすがに彼女はいきなりの要求に焦りを見せた。ちょっと待って、と慌てて俺を押しのけようとする。こんなに何度もベッドの中で甘くキスを交わしたにも関わらず、それとこれとはやっぱり別物だということか。 でも、俺はもう後戻りできそうにない。彼女の身体を宥めるように愛撫しながら、何とか蕩かせて受け入れてもらおうとした。 彼女が傷ついていることは承知しているのに、勢い興奮して身体をいやらしく弄り回してしまった。彼女が身体を硬く強張らせ、涙を滲ませる。…しまった。 俺は焦った。桐子に思い出させてしまった。弄ぶような触り方をしちゃいけないってわかってるのに。 髪を撫で、優しく何度もキスして、身体の表面をそっと確かめるように撫で回した。綺麗だ、お前は汚されてない、と何度も繰り返し囁く。
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