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「君は豆腐小僧……!?」
オニ元課長が驚きの声をもらしました。
豆腐小僧は会社の小間使いをして、普段はコピーとかお茶を配っている日陰者の妖かしだったからです。
「おいらは豆腐や酒しか運べない妖かしだから人間には忘れ去られた存在だけど、こんな大事な時こそ出番だと思って」
「それで山向こうへ行くのですか?」
「なくしてしまった大事なものを取り戻すために、おいらたち妖かしが駆けつけるのが、せめてもの人間への恩返しだからね」
「なくしてしまった大事なもの?」
「人間と妖かしは、深い絆で結ばれているってことさ!」
頭に丈の笠をかぶった豆腐小僧が胸をはって言いました。
「おれたちも一緒に行くぞ!」
また声がしました。
そこには、雨降小僧、茶汲坊主、片輪車、朧車、文車妖妃(ふぐるまようひ)が集まっていたのです。
「豆腐小僧だけに任せていられない。おれたちも物資を運んで人間の役に立ちたいのさ」
普段は人間を驚かせない日陰者の妖かしたちですが、みんな決死な眼をして今にも飛びだす勢いでした。
「どうしましょうか、テング部長?」
カッパ課長がきくと、
「わしの一存では決められないのだよ」
とテング部長は心もとない声をもらしました。
すると──
「シロ、いるかいっ!」
アオネさんの声です。
会社の警備員を振り切って、人間のアオネさんが部署に入ってきました。
「アオネさん、どうしたのですか!?」
「山向こうの地震の話はきいているね? それでお前たち妖怪のチカラを借りに来たのさ」
「ぼくたちのチカラ……?」
「人間と妖怪がチカラをあわせて、山向こうへ物資を届けたいのさ。そのための救援物資は、マスコミの連中をかき集めてここに持って来たぜ」
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