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「さすがはアオネさんです」
「良し。山向こうへ行くぞい!」
豆腐小僧が声をあげました。
「ちょっと待ってくれ。社長は海外視察で留守なのに、勝手に部署を離れると会社をクビになるぞ」
テング部長が泣きそうな声で引き止めますが、
「もとより、その覚悟です」
と豆腐小僧が振り切りました。
その時です──
「テング部長にカッパ課長よ。われが責任をとるから、みなを山向こうへ行かせてやれ」
人形のような子供が告げたのです。
「こ、これは座敷ワラシ会長!?」
テング部長とカッパ課長がひれ伏しました。
「海外の社長に連絡をとって、すでに応援がコチラに向かっておるぞ。みなはそれと合流して、人間たちを一人でも救うのが役目ぞ」
座敷ワラシ会長が指示します。
「それでこそ、あやかし会社だぜ!」
アオネさんがぼくの背中を叩きました。
山の向こうへ救援物資を届けるために、あやかし会社と人間が協力して行動しました。
かんばり入道が「がんばれ! がんばれ!」と応援しながら、山向こうへ妖怪たちが行進します。
豆腐小僧、雨降小僧、茶汲坊主、片輪車、朧車、文車妖妃、小さいおじさん、オニ元課長、カッパ課長、テング部長が「ワッセ、ワッセ」と物資を運んで進みます。
ぼくとアオネさんも一緒について行きますが、
「イカンぞっ、道路が崩壊してこれ以上は進めぬ!」
小さいおじさんが叫びました。
それで見ると、地震で道路が崩れているではありませんか。人間の車もそれで大渋滞で、山向こうへ行けない様子でした。
「どうすればいいのですか、アオネさん?」
ぼくはオロオロしてききます。せっかくここまで来たのに、これ以上進めないのは悔しいです。
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