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「万事休すか……」
さすがのアオネさんも声をもらしました。
「まだ諦めるのは早いぞ」
座敷ワラシ会長が指を指して言いました。
その指差す方を見ると──
なんと空に浮いているのは、トナカイが引くソリに乗ったサンタクロースでした。
「日本の妖怪を手助けに来たぞ」
真っ赤なサンタが言いました。
「礼を言うぞ、西洋の友よ」
座敷ワラシ会長が頭をさげます。
「やるじゃないか。サンタとは恐れ入ったね」
アオネさんが感心すると、
「人間を救けるのに、東洋も西洋も関係ないぞ」
と座敷ワラシ会長は笑みをこぼしました。
「ふふん。お前の会社は立派だな」
アオネさんがぼくに言うので、
「人間を幸せにするのが、ぼくたちの仕事ですから」
ぼくはちょっと自慢げに答えました。
そうしてぼくたちは空に浮かぶサンタのソリに引かれながら、山向こうの地震で困っている人たちの許へ急ぎます。
「もうすぐですから、待っていてくださいね」
ぼくは心の声が言葉となって出ました。
もうすぐ山向こうへ行きますから、それまでぼくたちを待っていてくださいね。
──あやかし会社 ─山の向こうへ届けて─ 終わり。
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