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香炉に唾を吐き掛け、電気を消してカーテンと窓を開ける。
「何なのよ!」
止めたが、遅かった。
「はー。外の空気は心地良いね」
見下げ果てた目で、朝日がベランダの桟に背を預ける。
「札幌。君がこんなに『リスクの高い』自分の家でしかサポートしないでくれと言っていたのは、この仕掛けを外のホテルで実現出来ないからだ。そして、この仕掛けには大いなる費用が掛かっている。だから君はその金額でなければ仕事をしない」
「………」
「そのお香、花の匂いで誤摩化しているけど、世間では販売されていない植物の標本を混ぜているんだろう?」
学生鞄から煙管を出して、小袋に入っているシケモクを千切って詰める。
スラックスから出したジッポで、煙管を吹かす。
「中国で人気のラーメン屋を知っているかい?」
「知らない」
「とても人気で客足の絶えないラーメン屋だった。そこで食べたラーメンが忘れられず、客は何度となくその店に足を運んでしまう訳だ。しかしある日、ラーメン屋で食事をした客が、たまたま、警察の道路検問に引っ掛かった。
その人は別に何もしていないので、言われた通りに尿を提出したが、その尿からは麻薬成分が検出された。………どころか、念のために調べられた家族の尿からも、同じ成分が検出された。子どもからもだ。
不審に思った警察が調べたところ、男の家族が食べたラーメン屋が怪しいとなり、家宅捜索が入った。客離れをさせないために芥子をラーメンに仕込んでいた事が判明、店主は御用になった」
紫煙が立ち上る。
「見た目の美しい君を最初は物珍しさで買った人は、これで君の事を忘れられなくなる」
悔しいけれども、言い返せない。
だって、こうでもしなければ、アタシなんかにコンスタントにお金を出し続けてくれる人間なんて、捕まえられなかったから。
アタシにはお金が要る。
だから。
「アタシ、何でもします、だから、」
「その言葉を僕は待ってたんだよ」
「え」
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