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途端、笑顔になる朝日。
数式の解を導き出した解答者の笑顔だった。
スカートの後ろで握りしめていたスタンガンを取り落としそうになる。
「僕の願いは、君からその仕事を奪うことになる訳だが」
やっぱりな。
まあ、どちらにしても結果は変わらない。
アタシは隠し持っていたスタンガンを後ろ手に握りしめた。
「朝日はゲイなの?」
何気なく話し掛けて、距離を詰める。
「僕は君と同じ、詰まらないノーマルだよ」
「は? アタシは、」
「ノーマルだろ。見れば分かる。
本質を隠すための、化粧とウイッグ。
自分を誤摩化すために、自分の飲む分にも入れているんだろう?
下瞼が片側だけ痙攣しているから、君が僕の発言に気分を害されているのも分かる。
その理由は君が僕の言葉を真実だと感じているからだろう、というのも分かる。
札幌。君は自分を殺してるだけのノーマルだよ」
「根拠ないこと、言わないで」
ふーっと顔面に吐き出される、白い煙。
「けほっ、けほっ」
臭い。噎せる。
「根拠はもう出尽くしている。
君は僕の年齢や容姿を好条件とは思っていないね?
君に取ってのカテゴライズでは、僕と中高年男性は大差ないらしい。ガッカリだ」
「………分かった風な事、言わないで。
アタシ、あんたが同年代だからびっくりしただけだし。
それに、電話だって、ほら、したじゃない」
「僕が全裸になろうとなるまいと君には僕が金に見えているだけだ。
僕はその確認をするために、君のスカートに手を突っ込んだんだけど………。
君は見事に冷めていたようだね」
「それは緊張して………」
「えー。残念だなあ。
ブラフだったんだけど」
「………」
絶句。
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