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本当に、世界が違いすぎて悲しくなってくる。
高校から世界は違っていた。
いつも周りに人が集まる睦月くんと、いつも一人ぼっちの私。
関わる事なんて絶対になかった。
席替えをして、席が隣にならなければ私と睦月くんは絶対に付き合ってなんてない。
一度も話すことなく卒業して、私は誰とも付き合わず、ただ仕事をこなしている人間になっていたんだろう。
そして睦月くんは可愛い女の子と付き合って、その先結婚して、子供が出来て……。
誰もが羨む生活をしていたんだろうな。
どうして私だったんだろう。
どうして私に告白してくれたんだろう。
嬉しいのに素直に喜べなくて、そんな自分がとても嫌で。
どんどん暗い感情が浮かんでくる。
こんなに近くに睦月くんはいるのに、どうしてか遠く感じてしまう。
私の何が好きなのか聞けないまま、もう二年が経ってしまったのだ。
「紗綾?」
睦月くんに声をかけられてハッとする。
顔を上げると心配そうに私を見ていた。
「あ……」
「大丈夫?話しかけても反応ないから……。疲れた?」
「ご、ごめん!ちょっと考え事してて」
「考え事?」
「仕事の事だよ」
そんなの嘘だけど、隠すために『仕事』と言うワードはとても使えるのだ。
睦月くんは納得したように頷いた。
「そっか。とりあえず、紗綾が行きたい場所に行こう。今日は紗綾のワガママ聞くから」
「そんなのいいよ。ここに連れてきてくれただけで嬉しいし。レモネードも凄く美味しい。ありがとう、睦月くん」
「……なんでそんな可愛いかな」
「え?」
「ううん、何でもない。じゃあ俺が紗綾を連れて行きたい場所に連れて行ってもいい?」
「うん」
繋がれた手を引っ張られる。
周りから私達はどう見えているんだろう。
ちゃんと恋人に見えているといいな。
そう思った瞬間だった。
「あれ?睦月くん?」
可愛い女の子の声が近くで聞こえて睦月くんの動きが止まる。
声の主を確認すると、睦月くんは「ああ」と言った。
「何してんの?」
会話を始めた睦月くんの様子から、彼女達は同じ大学の人なんだろう。
可愛い女の子にカッコいい男の子達。
睦月くんの周りはとてもキラキラしていて、高校と同じだなとぼんやり思ってしまう。
可愛い恰好だな……皆オシャレだな……。
ふと、自分の格好を見て落ち込んでしまう。
自分からこの格好を選んだのに。
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