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「紗綾……?」
「あ、えっと……。外じゃ近所迷惑になるから……」
とりあえず部屋の中に入って二人で座る。
なんかすごく気まずい……。
私の横の置かれているスーパーの袋にはお酒が大量に入ってるし、何より一人で酒盛りしようとしているのを彼氏にバレるとか。
恥ずかしくて今すぐ逃げ出したい気分だ。
「本当にごめん」
睦月くんが私に頭を下げる。
私は慌てて首を振った。
「だ、大丈夫だよ!?謝らないで!!」
「でも傷つけたのは本当だから。それに、この事で紗綾に別れ話されたら嫌だし」
「別れ話!?しないよ!?」
「ほんと?俺と別れない?俺の事好き?」
怒られている子供みたいに、私の顔色を窺って聞いている睦月くん。
上目遣いでこっち見るのは反則だと思います。
「本当。別れたりしない。そ、それに……好き、だし……」
言ってて赤くなる顔。
なんだ、この処刑方法は。
「紗綾、好き」
私に抱き着いてくる睦月くん。
私は背中を撫でた。
大型犬みたい……。
「ていうか睦月くん。お友達は良かったの?なんで私の家に来たの?ラインで良かったんじゃ……」
「謝るのにラインだと誠意が伝わらないから。それに、紗綾に直接謝りたかったし、俺が紗綾に会いたかったから。明日休みだし、本当は紗綾とずっと一緒にいたかったけど、毎週紗綾の家に通ってたら流石に紗綾が嫌がるかなって思って。気持ち悪がられたら俺、立ち直れない」
「気持ち悪いなんて思わないよ?」
「そう言って可愛い事言われたら我慢出来なくなる」
「!?」
「じゃあ俺、今日も明日も紗綾の家に泊まる」
「え?でもお友達と何かしようとしてたんじゃ……。ていうか、どうやって私の事追いかけてきたの?」
「走って」
「そうじゃない!なんて言って追いかけてきたのかって聞いてるの」
「何も言ってない。必死だったから店飛び出してきた」
睦月くんの言葉に頭を抱える。
絶対に友達は睦月くんを心配しているだろう。
むしろ私との関係を気にしているに違いない。
私なんかが睦月くんの彼女だとバレたら睦月くんのこれからの大学生活に関わってくる。
最悪、睦月くんが学校でボッチになったら……。
考えただけでも寒気がする。
「睦月くん、ちゃんと友達に言わないとダメだよ。それに先に約束してたのは友達でしょ?約束は破ったらダメなんだよ」
「でも……」
「私が約束を破られたら悲しくなるから、ダメ」
「紗綾との約束は絶対に破らないから」
そうじゃないんだけど……。
私は息をついて睦月くんから離れた。
「とりあえず、スマホ確認してみたら?」
そう言って睦月くんにスマホを確認するように促す。
睦月くんはポケットからスマホを取り出して画面を確認した。
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