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「結構買ったね」
「なんだか今日は酔いたい気分だったから……」
睦月くんのSNSを見てモヤモヤしたなんて言えるわけない。
何となく目を逸らしながら私は食器棚からグラスを取り出した。
「ねぇ、紗綾」
「何?」
「これからお互い用事なかったらどっちかの家に行くって約束しない?」
「え?」
「俺は毎日のように紗綾に会いたい。だから、毎日紗綾に『今日会える?』ってラインするからちゃんと返事して」
「それは、いいけど……。無理してない?」
「なんで?無理なんかじゃないよ。好きな子に会えるんだから、無理してるわけないでしょ」
睦月くんは私の手を握るとそのまま私の唇を奪った。
本当にこの人は流れるように私をドキドキさせる。
真っ赤な顔で固まると睦月くんはふわっと笑った。
「な、何か見る?」
二人きりで音もない状況は流石に緊張する。
私はテレビを点けた。
動画サイトを見ながら適当な映画でもかける。
オススメで出ていた恋愛映画だ。
見た事ないけど、何もないよりはマシだ。
「紗綾」
「ん?」
「最近仕事忙しい?」
「ううん、そんなに忙しくないよ。残業だってしなくていいし」
「そっか」
「睦月くんは行事とかたくさんあって忙しそうだよね。大学生活羨ましいな」
「紗綾がいない大学なんてつまんないよ」
「でも、もうすぐ夏休みでしょ?」
「夏休みになったら紗綾、遊んでくれる?」
「仕事の都合があるからまだ分からないけど……。時間があったら」
「うん、約束」
睦月くんに腰を引き寄せられて密着する。
なんで睦月くんってこんなに甘い匂いしてるんだろう。
ドキドキして顔が上げられない。
正直映画なんて見ている余裕ないよ。
しばらく二人でお酒を飲んでいると、突然睦月くんのスマホが鳴った。
睦月くんは相手を確認してから首を傾げた。
「友達からだ」
「え?何かあったのかな……」
「大丈夫。出なくても問題ない」
「そ、それは問題あるよ!?何かあったのかもしれないし、出てあげて」
私がそう言うと睦月くんは面倒そうに電話に出た。
「……何」
うわ、不機嫌。
何となく目を逸らして、内容を聞かないようにその場をゆっくり去ろうとしたけど、それは睦月くんに阻止された。
片手で私の事を抱き寄せて密着してくる。
どうして!!
睦月くんは友達と会話を数回してから電話を切った。
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