いつか思い出になる今日の事

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昨日買い物には行ったけど、お酒しか買ってない。 冷蔵庫を見てため息をついた 食べるものない。 仕方がないので私は買い物に出かけた。 せっかくだし、少し遠出してからスーパーにでも行こうかな。 買いたいものとか欲しいものは特にないけど、なんだか歩きたい気分だった。 昨日睦月くんの友達に『おばさん』と言われた事がまだ胸の奥に残ってる。 この地味な格好がダメなんだろうか。 それとも私って老け顔? ちゃんと手入れしないといけないのかな。 どれだけ頑張っても睦月くんの隣を歩いていて不思議に思われないようになるのが難しいと思ってしまう。 睦月くんなんてそのままでもカッコいいのに。 寝起きでもイケメンなんて、あの人は本当に得な人。 そんな事を考えていると前から見覚えがある人を見つけた。 あの人……。 高校時代私をいじめていた一人。 彼氏だろうか、知らない男の人と歩いている。 彼女も大学生になったはず。 睦月くんの事が好きだったけど、同じ大学に行かずに別の大学に行ったのだ。 でもここは地元から離れている。 高校時代の人に出会う確率は低いはずなのに。 相手が私を覚えているわけない。 そう思うのに心臓がドクドクしている。 その場から素早く立ち去ろうと少しだけ早足になって、そして通り過ぎた。 ホッと胸をなでおろす。 そうだよね。 地味で目立ってなかった相手の顔なんてどうでもいいに決まってる。 いじめられた本人だけが気になるだけ。 ……世界はとても不公平だ。 グッと手を握り締めて歩く。 どうして私は可愛くないんだろう。 どうして私は誰からも認めてもらえないんだろう。 睦月くんの彼女でありたいのに、睦月くんの負担になりたくなくて。 睦月くんが自慢できるような彼女だったら、睦月くんに迷惑をかけることもないのに。 変わりたい。 「変わりたい……」 そう呟いて私は顔を上げた。 自分から動かないと何も始まらない。 もう、いじめられていた私はいない。 私は小さく気合いを入れてスマホを手にした。 ・
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