いつか思い出になる今日の事

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睦月くんの隣で目を醒まして時計を見る。 あれから寝てしまったのか……。 時間は夜の11時になっていた。 睦月くんを起こさないようにベッドを抜けて下着を身に着ける。 そして上だけシャツを着てスマホを手にした。 眠っている間に嫌な夢を見た。 高校時代に嫌がらせされていた思い出。 昼にあんなもの見たからかな。 こっそりクローゼットを開けて箱を取り出す。 本当に早く処分しないと、これからも夢でうなされそうだ。 睦月くんが寝ている間に捨ててしまおうか。 そう考えて立ち上がろうとすると、不意に後ろから抱き締められた。 ビクッとして心臓が飛び跳ねる。 「それ、何?」 寝ぼけた声で問いかけてきたのは睦月くん。 なんて答えたらいいのか分からなくて、私は黙ってしまった。 「箱の中、何が入ってるの?」 「えっと……」 「見ちゃダメなの?」 そう聞かれて私は頷いた。 だって、中を見られたら絶対に睦月くんは不機嫌になるから。 そんなの分かってて見せられるわけない。 「こ、これはもう捨てようと思ってて……」 「捨てちゃうの?だったら中見てもいい?」 「恥ずかしいものだからダメ!!」 「ふーん……」 睦月くんは不思議そうにして私から離れた。 ホッとすると、睦月くんは私の隙をついて箱の中を開けた。 「睦月くん!?」 「……なにこれ」 そう聞かれて私は目をギュッとつむった。 見られた……。 私の黒歴史……。 「高校の時のじゃん」 「うん……」 「……こうやって紗綾は傷ついてたんだ」 「え……」 「俺のしてた我慢、全然意味なかったんじゃん」 睦月くんはため息をつくと私を抱き締めた。 「紗綾に嫌がらせされるの嫌だから、好きでもあまり話しかけなかったのに。それなのに、俺の我慢は紗綾に嫌がらせしてた奴らによって無駄になったってわけだ」 「睦月くん……?」 「ほんと……むかつく」 睦月くんは箱を持つとそのまま中身をゴミ箱に捨てた。 驚いて動けない私。 そんな私に睦月くんは口を開いた。 「紗綾。きっと今日の事だっていつか思い出になる。だから昔の事も思い出になってる。でも傷は絶対に消えないよね。俺が謝るのは絶対に違うし、そんな事しても紗綾が気にするだけって分かってる」 「え……」 「昔の事なんて気にしないでほしい」 「!!」 「俺は、紗綾にずっと笑っててほしい。こんなもの、無かった事にすればいい」 睦月くんはそう言うと私の頭を撫でた。 「俺、何があっても紗綾の事離さないから」 ・
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