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──────────────……
「よし……。これで完成」
出来上がった資料を持って先輩に持っていく。
先輩は笑顔で受け取ってくれた。
高校を卒業してから私は大手IT企業に就職した。
お母さんの負担を少しでも軽くしたかったからだ。
そして私の初めての彼氏、田原くんは……。
スマホに田原くんの近況がアップされた事のお知らせが映る。
……いいな、大学生。
田原くんは大学生となった。
大学で楽しそうに先輩やら友達に囲まれて笑顔で写る田原くんの写真を見る度にそう思ってしまう。
ダメだダメだ!!
もう付き合って2年が経った。
ちゃんと我慢するって決めた事だ。
私は頬を叩いて気合を入れた。
「先輩。コレなんですけど……」
後輩の女の子に声をかけられて振り向く。
そうだ、今は仕事に集中。
私は後輩に仕事を教えて気分を紛らわせた。
仕事を終えて家に帰る。
お母さんを楽にさせるために一人暮らしを始めた私。
ちゃんとお母さんに仕送りはしている。
今までお世話になってたし。
1人の部屋に帰るとため息をついた。
うー……。
またモヤモヤしてる。
田原くんは学生で、私は社会人。
すれ違いなんて仕方ないって頭ではわかってるのに……。
「田原くんに電話、していいかな……」
私はスマホを取り出して田原くんに電話をかけた。
『もしもし?』
田原くんの声がスマホ越しに聞こえる。
その事にまだドキッとしてしまう。
そりゃ2年も付き合ってるんだし、やる事やってる訳なんだけど……。
この人の声はなんでこんなにも麻薬みたいな甘い声なんだろう。
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