空に浮かぶ夜の花

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睦月くんの言葉に静寂が走る。 それから友達が戸惑いながら口を開いた。 「え?この人が、睦月がずっと言ってる『超可愛い彼女』……?」 「想像してたより、なんて言うか……」 「ずっと…その……」 言いにくそうな雰囲気。 ほら、こうなるからバレたくなかった。 睦月くんの趣味が疑われて、それでこれからの学校生活が酷いものになったら私のせいだって。 それが現実になろうとしてる。 「お前ら何が言いたいの?俺にとっては間違いなく一番可愛いし、嘘なんて一つもついてないんだけど」 睦月くんが怒っている事に気が付いたのか、一人の男の子がなだめるように睦月くんの肩を叩いた。 「そ、そんなに怒るなって。俺達別に何も否定的なこと言ってないじゃん」 「言ってなくても態度で分かる。それで人が嫌な気持ちになるって考えらんないの?」 「ごめんって。突然睦月に彼女紹介されて驚いただけだって」 このままでは睦月くんと友達の関係が悪化してしまう。 なんとかしないと……っ。 「あ、の……」 そう声をかけた瞬間、可愛い女の子が私にニコッと笑った。 「はじめまして、睦月くんの彼女さん。私、仁坂(にさか)音夢(ねむ)って言うの。ずっと睦月くんから聞いてたよー。園原紗綾ちゃんだよね?同じ歳だって聞いてる」 「え……あ……」 「でも、良かったの?」 「え……?」 「彼氏とのせっかくの花火大会デートなのに私服って。それにそんな動きやすそうな格好。睦月くん、彼女の浴衣見たかったと思うよ?」 「!!」 「睦月くん優しいから言わないと思うけど、心の中ではがっかりしてるんじゃないかな」 ナイフで胸を一突きされたような感覚。 睦月くんは男の子達に絡まれてる。 それに、仁坂さんや他の女の子達は睦月くんに分からないように私を囲んでる。 この目は知ってる。 『牽制』『嫌悪』『憎悪』……。 私の事が気に入らないって、言われていなくても分かる。 「正直、睦月くんが『可愛い』って言ってるし、超溺愛してるの分かってたから勝ち目ないって思ってたけど。『この程度』だったら完璧に勝てるわ」 「っ!」 「紗綾ちゃん、睦月くんの事奪っちゃったらごめんね?」 そう言われて、もう耐えられなかった。 私は人ごみをかき分けて逃げるように走った。 どれだけ頑張っても私は睦月くんの隣に立てない。 それを誰も許してくれない。 何を勘違いしていたんだろう。 底辺の人間はいくら頑張ってもずっと底辺を這っていないといけないって分かっていたのに。 涙が溢れて、息が出来ないくらい苦しくて。 人の流れから逸れて、私は公園にやって来た。 人通りはほとんどない。 だから誰にも迷惑をかけずに泣いていられる。 早く別れないと。 これ以上睦月くんに迷惑をかけたくない。 ベンチに座って目をこすっていると、私の前にしゃがむ女の子が現れた。 ・
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