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凄く美人……。
耳にしていたヘッドフォンを首にかけて私をジッと見つめる。
「大丈夫?」
そう声をかけられてハッとする。
「あ、はい……」
「そう」
女の子は無表情でそう言うと私の隣に座った。
それからコンビニの袋からアイスを取り出して私に差し出した。
え?
「あの……」
「あげる。美味しいよ、これ」
「でも……」
「甘いもの食べたら元気でるから」
女の子は問答無用で私にアイスを手渡す。
仕方なく受け取ってアイスを口にした。
確かにとても美味しい。
そして同時にまた涙が零れ落ちた。
「何かあったの?」
「……っ」
「私で良かったら話聞くよ」
初めて会った綺麗な女の子。
普段なら絶対に話せないのに、なぜだかこの女の子には話せそうな気がした。
「私にはお付き合いしている人がいるんです。その人はとてもカッコよくて、大学でも人気で友達も多くて。私なんかが付き合えたのが奇跡みたいな人なんです。……さっき、その彼の友達に出会って。直接何も言われませんでしたが、友達の態度は完全に私を否定しているものでした。自分でも分かっているんです。彼は私なんかには勿体ない、釣り合ってないって。それでも私は彼の側に居たいがために彼に迷惑をかけている。最低です……っ」
「迷惑だって、その彼氏に言われたの?」
「いいえ。彼はそんな事は絶対に言いません。優しいから、思っていても言えないんだと思います。さっきの事で彼の友達には完全に彼の趣味を疑われてしまいました。私のせいで彼に友達がいなくなってしまったら……どうしよう……っ」
とめどなく涙が溢れてきて、何度拭っても零れて落ちる。
女の子はしばらく黙ってから口を開いた。
「あのさ、私の友達の話なんだけど。そいつ、毎日のように自分の彼女の事自慢してくるんだよね。彼女とのライン見ながら『可愛い』『結婚したい』『すぐ会いたい』って。でもそいつ、そう言ってから必ず寂しそうな顔するの。『なんで俺と釣り合ってないなんて言うの?』って。自分が彼女に無理させてるって思ってて、彼女はそいつに遠慮してて。なんかさ、あんたの事見てたらそいつ思い出した」
女の子は私の涙を指で拭った。
その事に驚いて女の子を見てしまう。
「あんた、田原睦月の彼女でしょ」
「!?」
「さっきコンビニ行こうとした時に一緒に歩いてるの見た。あんな幸せそうな顔してる睦月初めて見たし、本気であんたの事好きなんだろうなって態度で分かったから」
「え……じゃあ……」
「さっきの友達の話、睦月の事だよ」
「!!」
「心配しなくても、睦月は毎日あんたに恋してる。毎日好きだって言ってる。睦月の入ってるサークルメンバーって全員馬鹿だから、あまり気にしなくてもいいと思うけど」
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