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ベルちゃんがスマホ画面を見て嫌そうな顔をする。
「うわー……何コレ引くわー……」
「俺が想像してたよりも遥かに電話もメッセージもきてて、流石に俺も引くかも」
「え?」
確かに電話の件数も100を超えてるし、メッセージも尋常ではないくらい届いてる。
私が何も言わずに飛び出したのが悪いし、ここまでしてくれるのは睦月くんが優しいとしか言いようがない。
「彼女に対して超溺愛してるから、実際どれくらいのもんなのかと思ってたけど……。俺の想像以上だった。うん、なんか睦月、怖い」
久篠くんが呆れながら笑う。
ベルちゃんはため息をついた。
「可哀想だから返事してあげたら?」
「え?」
「紗綾の事、本気で心配して死にそうだろうから」
ベルちゃんに促されるけど、私の指は動かなかった。
なんて言えばいいか分からない。
私、別れようとしてたのに……。
「あ、俺にいい案がある!」
そう言って久篠くんは私の肩を突然抱いた。
「!?」
「何してんの、深紅」
「写真撮って睦月に送り付けんの」
久篠くんは素早く写真を撮るとスマホを操作して満足げに頷いた。
「はい、コレですぐにでも俺に電話……」
全て言い切る前に久篠くんのスマホが音をたてた。
「言ってるそばからきたー。……はい、もしもーし。そんな怒んないでよ、睦月くーん。睦月の彼女保護しただけでも感謝してもらいたいもんだよ本当は。祭りなんて、浮かれてるバカがうろついてる危ない場所なんだからね?紗綾ちゃん一人だったら今頃何処の馬の骨かも分からない男にいいようにされてたかも……あーはいはい。分かったから怒鳴んないでってー。場所ね、ベルが住んでるマンションの近くの公園……って、うわ。すぐ切られた」
久篠くんは肩を竦めてスマホを仕舞った。
「ちょっと待ってね、紗綾ちゃん。すぐに王子様がやって来るから」
「あ、ありがとうございます……久篠くん」
「いいってー。俺って女の子には優しいからさ、紗綾ちゃんが困ってたら助けてあげる」
「おかしいな。私も女だけど深紅に助けてもらった記憶がない」
「ベルはほらー、友達だもん」
「紗綾だって友達じゃん」
ベルちゃんの言葉に固まる。
「友……達……?」
「え、うん。私らもう友達でしょ?」
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