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その言葉に嬉しくて泣きそうになる。
私の事を何の迷いもなく『友達』と言ってくれる人がいる。
ずっと一人ぼっちだった私に、神様がご褒美をくれたみたい。
そんな事を考えていると公園に走ってくる人が。
「紗綾!!」
そう言って私を痛いくらい抱き締める男の子。
私の手からは、もうすでに溶けてしまっていたアイスが地面に落ちた。
「睦月くん……」
「大丈夫だった?何もされてない?」
「平気。ベルちゃんも、久篠くんも、とても優しくしてくれたよ」
私を軽く離すと睦月くんはホッとしたように息をついた。
「睦月、だいたいの事は紗綾から聞いた。サークルの奴ら、紗綾に酷い事言ったんだって?」
ベルちゃんの言葉に睦月くんは頷く。
「女子が紗綾に何を言ったか分からないけど、こうやって紗綾が泣いてたって事は酷い事言われたって事だよね」
「……」
「ごめんね、助けてあげられなくて」
「ち、違うの!睦月くんは何も悪くない!」
そう言うと睦月くんは悲しそうに笑った。
「でも、ベルと深紅が紗綾の事見つけてくれて良かった。正直心臓止まるかと思ったし」
言った方がいいのかな。
睦月くんと別れる気でここに来たわけだし……。
これから先だって睦月くんが私と付き合っている事で何か言われるのは目に見えて分かる。
睦月くんのためにも言った方がいいような気がする。
私はグッと手を握り締めて睦月くんを見た。
「睦月くん」
「何?」
「えっと……」
心臓がバクバクして喉が渇く。
凄く胸が苦しくて、悲しい気持ちになる。
「あ、の……っ」
「紗綾?大丈夫?なんか震えてるけど……」
「私と……っ」
そこまで言ってベルちゃんに手で口を塞がれた。
「!?」
「言わなくていいんじゃない、それ」
「何してんの、ベル」
「何?睦月は紗綾の言葉の続きが気になる?聞いたら絶対に睦月怒ると思うけど」
ベルちゃんの言葉を聞いて察した睦月くんは私を見た。
「もしかして紗綾……俺と別れようと……?」
「……っ」
「なんで……」
悲しそうな睦月くんの顔。
胸がどんどん苦しくなる。
「紗綾、さっき言ってた。『睦月に迷惑かける』って」
「迷惑って……。紗綾が俺に迷惑かけるなんて無いよ」
「自分に自信がない、だから周りの目が気になる。どうせあの仁坂音夢にでも嫌なこと言われたんだと思うよ」
ベルちゃんの言葉に睦月くんはため息をついた。
「そうなの?紗綾」
何も言えなくて俯くと睦月くんの手が私の頬を撫でた。
「紗綾の事、悲しませた事は謝る。でも、紗綾の考えてる事は絶対に叶えてあげられない」
「なんで……っ」
「俺が紗綾と別れたくないから。俺にとって紗綾は死ぬまで一緒にいたい人だから。俺は周りに何を言われても全然平気。迷惑なんて絶対に思わない。紗綾が俺を嫌っても、俺はもう一度好きになってもらえるように頑張るから。だから、俺のそばから離れるとか、俺と別れるとか、そんなの考えるのやめてよ」
睦月くんが私の顔をあげる。
それから優しく笑った。
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