空に浮かぶ夜の花

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「今まで本気で友達になれたやつとか、本気で全部話せた奴なんて一人もいなかった。相談なんて出来なかったし、周りの奴らは俺の顔目当てで俺を全然見てくれてなかった。だから正直人間関係なんて面倒だなって全部嫌になってさ。 初めてなんだよね、大学生になって。本当の友達ってのが出来たの」 「ベルちゃんと久篠くんは、睦月くんにとっても大事な人なんだね」 「うん。俺が心から全部話せる信用出来る奴ら。だから今日も紗綾を見つけてくれたのがあいつらで本気で良かったって思った」 「うん……」 「言っとくけど、紗綾だって俺にとって本気で付き合いたいって思った初めての相手なんだからね。だから絶対に離さないし、別れるなんて言わせないから」 怒ったように言って私の手を握る睦月くん。 私はクスッと笑った。 「睦月くん、子供みたい」 「紗綾が意地悪な事したりするから」 「意地悪なんてしてないよ」 「俺の側から離れようとするし、俺を頼ってくれないもん」 そんな可愛い拗ね方をされるとは思っていなかった。 「……俺、サークルやめる」 「え?」 「紗綾に嫌な事言ったり、嫌な思いさせた奴らを友達だって俺には言えない。それに俺はあいつらが居なくなっても平気だし。薄い友達関係だったわけだしね」 「でも……」 「気にしないで。ベルも深紅も居ないサークルだったし、俺も何も楽しくなかったし。今までと変わらない、俺の顔しか見てない奴らばっかでうんざりしてたところ。サークル辞めたらバイトにもっと入れるし、いい事しかないから」 睦月くんの言葉に嘘は感じられない。 でもそれと同時に悲しくなった。 そんな事を考えたり、周りの人の気持ちに気づきながら今まで生きていたんだって。 睦月くんの世界に憧れていたけど、いい事ばかりじゃないんだって。 分かっていたのに私は無いものねだりをしていた。 ほんとに恥ずかしいな……。 「睦月くんの好きなようにしたらいいと思う」 「うん」 「私達、似てないようで似てるんだね」 「え?」 「ううん、何でもない」 そう言うと同時に花火が打ちあがる。 空を見上げると空に大きな花火が華を咲かせていた。 来年も、またその次も、睦月くんと一緒にお祭りに来れますように。 それでいつか、睦月くんと結婚出来たら……。 未来で小さな手を握れることを願いながら私は睦月くんの手をギュッと握った。 【空に浮かぶ夜の花】 ~心の中で彼との未来を空の花に願った~ ・
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