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「ねぇ、ベルと仲良くなりすぎじゃない?」
突然睦月くんからそう言われてキョトンとする。
私を助けてくれたあの日からベルちゃんとは結構仲良くなった。
大学での睦月くんの様子とか教えてくれるし、とても話しやすい子だから。
「仲良くなっちゃ……ダメだった?」
不安になってそう聞くと睦月くんは首を左右に振った。
「そうじゃない。紗綾がベルと仲良くなれて良かったって思うし」
「じゃあ、どうして?」
「だって、俺と居る時よりも楽しそうなんだもん」
拗ねたようにそう言われて私は固まってしまう。
それから笑った。
「初めて出来た女の子のお友達だから。女の子でしか出来ない話しとか出来て楽しくて。それに……睦月くんと一緒にいるのは楽しいけど、緊張するから……」
「その言葉はめっちゃ嬉しいけど、やっぱり紗綾をベルに取られた気がして悔しい」
睦月くんは拗ねながら私の肩に頭をグリグリした。
「……ごめんね」
睦月くんが突然そう言い出して驚く。
「どうしたの?なんで謝るの?」
「だって……サークル、辞めさせてもらえなかったから」
夏祭りの日に睦月くんは『サークルを辞める』と宣言していた。
でも、サークルの人にそう伝えると凄く引き止められたりしたみたいだ。
優しい睦月くんは無下にする事も出来ずにサークルに所属したまま。
私は別に辞めて欲しかったわけじゃないし、そのままでもいいと思うんだけど……。
どうやら睦月くんはあの日の事を許せていないみたいだ。
「睦月くんのお友達なんだから、辞めなくて正解なんじゃないかな?」
「でも紗綾に嫌な事言った、傷つけた。それで紗綾から別れ話されそうだった。これでムカつかない奴はいないと思う」
「それは……私も、悪かったって言うか……」
「俺、紗綾と別れずに済む方法めっちゃ考えたんだよ」
「え?」
「色々考えて、めっちゃ有効なのは『紗綾と子供作ればいい』って感じ」
「!?」
こ、子供だと……!?
びっくりしすぎて赤い顔で固まってしまう。
睦月くんはため息をついた。
「でもさ、俺はまだ学生だし紗綾と結婚しても養えるわけじゃない。紗綾に苦労かけたくないし、それはマジで最終手段として置いとくべきだなって」
睦月くんに軽々しく『別れたい』とか絶対言っちゃダメだ。
私はドキドキしている心臓を押さえて深く息をついた。
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