意地悪なお姫様

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「そういえば、もうすぐ紗綾の会社も長期休暇に入るんでしょ?」 「うん」 「だったらさ、一緒に実家戻らない?」 「え?」 「だって俺達って実家も近いわけだし、一緒に帰って、そんでちょっと地元でデートしようよ」 そう言われて私は少し嬉しくなった。 高校時代に出来なかった事。 好きな人と一緒に地元を歩けるなんて……。 「うん」 睦月くんに笑いかけると睦月くんも笑った。 「ああ、そうだ。明日、俺サークルの飲み会あるから帰ってくるの遅くなりそう」 「大丈夫。お友達と仲良くね」 「……正直、仲良くしたくないけど」 「ダメだよ。睦月くんと『友達になりたい』って思って友達になってくれた人達なんだから。無下にしないで」 「だってあいつら紗綾の事……」 「私はもう気にしてない。ベルちゃんや久篠くんが友達になってくれたから」 睦月くんはそれ以上言っても無駄と判断したのか、一度口を開いて閉じた。 「本当に優しいよね、紗綾」 「そうでもないよ」 「優しいよ」 睦月くんから軽くキスをされて赤くなる。 この人が私のせいで不幸せにならないように、私は絶対にこの人を守るんだ。 この人の生活も、この人の今を。 次の日。 私は茂住くんから飲み会に誘われた。 「今夜?」 「うん。園原も行かない?もうすぐ長期入るし、その前にお疲れ会しようって先輩と話してたとこ」 「私が行ってもいいの?茂住くんだけ行けば……」 「えー?先輩も園原誘ってって言ってたし、来てほしいから言ったんだと思うけど?」 茂住くんはそう言うと頬を膨らませた。 私を誘ってくれるなんて、本当にこの会社の人達っていい人ばかり。 今日は睦月くんも遅くなるって言ってたし……。 「迷惑じゃないのなら、行かせてもらおうかな」 「是非!」 茂住くんは嬉しそうに先輩の所に戻る。 そんな茂住くんを見ながら私も小さく笑った。 ・
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