学生王子に翻弄されて

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「あ、あの……田原くん……」 いつまでたってもこの人と話す時にどもってしまう。 こんなんじゃいつ嫌われてもおかしくない。 『どうしたの?紗綾』 名前を呼ばれただけで顔が真っ赤になる。 「あの……えっと……」 何を話せばいいのか分からない。 ただ私は田原くんの声が聞きたかった。 それだけで……。 『紗綾?なんか変……』 田原くんがそう言うと電話の向こうで田原くんとは違う声がした。 『睦月何してんのー?』 『お前邪魔すんなよ』 『次睦月くんの番だよ!』 男の子と女の子の声。 少しだけ賑やかになる電話の向こう。 『ごめん、紗綾。今友達とカラオケ来てて……』 楽しそうな周りの音に耐えられなくなって、私は何も言わずに電話を切ってしまった。 ……何をしてるんだ私は。 ハッとして青ざめても後の祭り。 こんな態度が悪い女、すぐに捨てられて当然かもしれない。 きっと大学には可愛い子とかたくさんいるんだろうな。 さっき聞こえてきた女の子の声、可愛かったなぁ……。 「睦月くん、か……」 私でも名前で呼んでないのに、大学で女の子に名前呼びされてるんだ。 モヤモヤしたものがどんどん広がっていく。 こんな醜い嫉妬良くないって分かってるのに止められない。 「馬鹿みたい……」 私はスマホをテーブルに置いて浴室へ向かった。 さっさとお風呂入って寝よう。 仕事で疲れた声とか顔とかで居たくない。 頭を左右に振ってお風呂場の扉を開けた。 .
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