意地悪なお姫様

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席は離れてるし、睦月くんは下向いたままだし、きっと周りの人も私の事なんてとっくに忘れてる。 このまま気づかれずに何事もなく過ごせたらいいんだけど……。 「あれ?園原の彼氏の隣に座ってる奴……」 いつも笑顔の茂住くんから笑顔が消える。 睦月くんの隣? 隣には夏祭りの日に私に嫌なことを言ってきた女の子、仁坂さん…だっけ? 確か、睦月くんの事を狙ってる子。 凄く近い距離に胸の奥がモヤっとした。 でも、茂住くんはどうしてそんな顔を? 「仁坂さんの事、知ってるの?」 「知ってる。……もう二度と関わりたくないって思ってた」 それは前に仁坂さんと何かあったって事だ。 これ以上踏み込めない。 私は睦月くん達から目を逸らして茂住くんに話しかけた。 「ほ、ほら!飲み物運ばれてきたし、先輩たちと乾杯しよ」 「え?ああ、ほんとだ」 茂住くんは笑顔で先輩たちに話しかけた。 楽しそうな茂住くんに戻ってホッとする。 仁坂さんと何があったのか気になるけど、思い出したくない事を聞くのも違う。 話したくなったらきっと茂住くんは話してくれるから。 私も先輩に話しかけられて会話をする。 それからしばらくして先輩たちの酔いが回ってきた頃。 私のスマホにお知らせが届いた。 え……睦月くん? 驚いて睦月くんを見ると睦月くんとばっちり目が合った。 スマホを開いてメッセージを確認すると『紗綾、一緒の店にいる?』ときていた。 固まっていると更にメッセージが届く。 『一瞬で目が合ったって事は、俺がいるって知ってたでしょ』 う……っ 完全にバレてる。 観念して私も返信した。 『ごめんなさい。お店に入った時から気づいてた。でも、睦月くんの事邪魔したくなかったから』 『邪魔じゃないよ。知ってたら退屈な時間過ごさなくて良かったのに』 『退屈なんて言ったら友達可哀想だよ』 『俺は別に来たくなかった。でも、来ないと家までこいつら押しかけてきそうで嫌だったから』 あのメンバーだったらあり得る。 私は苦笑いをした。 「どうかした?園原」 急に茂住くんから声をかけられてビクッとする。 「え!?あ、ご、ごめん!何!?」 「いや、特に何もないんだけど。大丈夫?酔った?」 「ううん!大丈夫!」 茂住くんは不思議そうにしながら私を見ていたけど、先輩に声をかけられて先輩と話し出した。 ホッとして胸をなでおろす。 スマホに目を戻すと不機嫌極まりない睦月くんからのメッセージが届いていた。 『紗綾の隣の男、誰?ちょっと近くない?』 『同僚の男の子だよ。心配しなくても、この人は私に興味ないから』 『なんでそんな事言いきれんの?』 『だってこの人、彼女いるし。彼女の事めちゃくちゃ好きって知ってるから』 そう送ると睦月くんからハートを抱っこした犬のスタンプが送られてきた。 『俺と同じだね』 『そう言われると恥ずかしいから……』 『その人とは友達になれそう』 『多分なれるよ。同じ歳だし、話しやすいし、睦月くんみたいな人気者だから話も合うと思う』 ・
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